放射性物質の“湧き出し”って何?発見時の対応と安全対策
身元不明の放射性物質は「被ばく事故」を引き起こす

会社の倉庫、家の納屋、理科の教室などから、いつの時代のものか分からない身元不明の放射性物質や放射線源が見つかることがあります。私が分析機関に勤めていたときも、この手の問い合わせはよくありました。


このことから、管理されていない放射性物質や放射線源が見つかることを湧き出しと呼ぶこともあります。
また、原子力や地熱事業といった事業を展開している企業では、放射能を持つ鉱物(ラジウム鉱石やウラン鉱石など)を保管している例もあります。
これら鉱物を適切に防護することなく保管していると、思わぬ被ばく事故をひき起こすことがあり、注意が必要です。
身元不明の放射性物質を見つけた場合にすべきこと
まずは原子力規制庁に連絡する必要があります。連絡先は下記をご参照ください。
連絡すると発見した場所や保管の状況など、いくつか聞かれると思います。よくある話なのですが、身元不明の放射線源の詳細について原子力規制庁から聞かれたときに、明確に回答できないケースが多いです。
というのも、このようなケースでは、管理している記録そのものがなかったり、容器のラベルが古くて見えなかったり、身元不明の放射線源に関する情報が見つからないことがほとんどです。




法規制の対象にならないケースもある


「届出」が必要なケース
- ウランまたはトリウムの放射能の濃度が74(Bq/g)(固体状の場合は370(Bq/g))を超える。
- 「対象物質に含まれるウラン量の3倍」+「対象物質に含まれるトリウムの量」=900gを超える。
この両方を満たす場合、法規制の対象となり、使用の届出が必要になります。
「許可」が必要なケース
- ウラン量が300gを超える。ここでいうウランは天然ウラン、劣化ウランである。
- 濃縮ウランは、放射能濃度、数量にかかわらず全て法規制の対象となる。
- トリウム量が900gを超える。
このいずれかに当てはまる場合、法規制の対象となり、使用の許可が必要になります。

逆に、放射能と数量が基準値以下やったら法規制の対象にならへん。そやから法律の観点からも、放射性物質を見つけてもうた場合は、数量、重量、放射能濃度といった情報が重要となるわけや。
原子力規制庁のホームページに「ウラン・トリウムガイドライン」があるので、詳しく知りたい方はそちらをご参照ください。
身元不明の放射性物質の放射能をどのように把握するか

身元不明の放射性物質の情報で最も重要なのは、放射能です。放射能が分からないと受け入れ先や処分方法を検討することもできませんし、何よりも被ばくを防ぐ上で押さえておきたい情報です。
放射能が分からない場合、分析機関に放射能分析を依頼する必要があります。






分析機関には、写真だけじゃなくて、試料の性状や形状(粒状・粉状・塊等)、保管状態など、可能な限りたくさん情報を伝えていただいたほうが確実です。
可能ならサーベイメータで線量を測定しておくのがベスト
もう一つ最後に、可能であれば、サーベイメータを用いて放射性物質の線量を測定していただくのがベストです。
サーベイメータについてご存じない方は、下記をご参照ください。
偶然発見された放射性物質は、放射線源として認識されていないため、放射線に対する防護が行われずに放置されていたり、無造作に保管されているケースが多いです。
サーベイメータで線量を知ることができれば、おおよその被ばく線量を見積ることができます。無視できるレベルなのか、防護や遮へいが必要なのかといった判断もできるかと思います。

