放射能の「検出・不検出」ってどういう意味?
この記事では、放射能分析における「検出・不検出」について解説しています。
放射能分析の世界では、「放射能は不検出であった」とか「検出下限値を下回っていた」といった表現がよく使われます。
なじみのない方には聞き慣れない表現かと思いますが、これらの意味することを知っていれば、放射能に関する情報を正しく判断することができます。
放射能の「検出・不検出」は「検出下限値」で決まる
我々は、放射性物質から放出される放射線を測定することによって放射能を求めています。放射線という情報を頼りにして間接的に放射性物質の存在を把握しているとも言えます。
放射性物質があり、放射線を出していても、その放射線を信号としてキャッチできなければ、我々は放射性物質の存在を知ることができません。
※放射性物質、放射線、放射能の違いについては、以下の記事を参照してください。
放射能の検査を行うときには、「検出下限値」を基準に「検出・不検出」を判断します。
放射線の信号の大きさが検出下限値よりも大きければ、「検出された」ということです。
逆に、信号の大きさが検出下限値よりも小さければ、「検出されなかった」ということです。

結論から話したけど、放射能の「検出・不検出」を理解するには、「検出下限値」の意味を知っておく必要があるから、以下で詳しく見ていくで。
「検出下限値」とは、ノイズから判別できるボーダーラインのこと
唐突ですが、聴力検査ってありますよね。健康診断などでヘッドホンをつけて「ピー」という音が聞こえるかどうかをチェックするやつです。

この音は小さくて聞こえにくい音ではあるのですが、検査は比較的静かな部屋の中で受けるので、耳に異常がなければ何とか聞こえるレベルかと思います。
ここで、この聴力検査を屋外で受けることを想像してみてください。部屋ではなく外です。風の音、工事現場の音、車の行き来する音、色々な音が聞こえてきます。静かな部屋で聞こえていた音も、屋外の環境だと聞こえにくいのではないでしょうか。

小さな音が鳴っていても、それが聞こえるか聞こえないかは、聞く側の環境によって左右されます。静かな部屋であまり周囲の音がしない環境であれば聞こえますし、屋外の音がやかましい環境であれば聞こえません。

この周囲の音の大きさが「検出下限値」のイメージやね。
放射能に話を戻しましょう。今、あるお魚に放射能がどれくらいあるのかを検査したいとします。
放射能を知るには、測定器を用いて放射性物質から放出されている放射線の信号をキャッチする必要があります。でもその信号をうまくキャッチできるかは、測定する環境次第です。
というのも、私たちの身の回りにも放射線というものは存在しています。もちろん目には見えませんが、空からも地面からも何かしらの放射線が常に飛び交っています。これら環境中の放射線は、お魚の放射能を測定するときにノイズとなります。

測定する環境のノイズが大きいと、お魚からの放射線の信号がノイズに埋もれてしまい、うまく判別できません。逆に測定する環境のノイズが小さければ小さいほど、お魚からの放射線の信号をうまく判別することができます。
つまり「検出下限値」とは、放射能の検査を行うときに、測定対象の物質からの放射線を周辺環境のノイズから判別して、ギリギリ検知できるラインという意味合いです。

周辺のノイズが大きいと、判別の難易度が上がってしまうから「検出下限値」は大きくなるし、逆にノイズが小さければ「検出下限値」は小さくなるというわけやな。