被ばくを避ける方法:福島の事例から考える

2025年9月18日

原子力発電所や核関連施設が事故を起こしたとき、被ばくを避けることはとても大事です。
それは自分の健康を守るだけでなく、家族や友達など、愛する人を守ることにもつながります。

放射線は目に見えず、匂いもしません。普段から被ばくを意識している人はほとんどいないと思います。でも、もし原発事故が起きたときは、少しでも関心を持って被ばくを減らす行動をしてほしいです。

この記事は「自分には関係ない」と思っている方にこそ読んでいただきたい内容です。

福島第一原発事故で何が起きたのか

2011年3月11日、東日本大震災が発生しました。巨大地震と津波によって福島第一原発は深刻なダメージを受けました。

地震と津波で電源がすべて失われ、原子炉を冷やす機能が停止しました。結果として炉心は過熱し、燃料が溶け落ちるメルトダウン(炉心溶融) を起こしました。

さらに、原子炉建屋の内部にたまった水素が爆発し、建物は吹き飛びました。テレビで中継された水素爆発の映像は、多くの人に強烈な印象を与えたと思います。

白い煙が立ち上り、原子炉建屋の壁や屋根が破壊されるその姿は、まさに「制御不能の事故」であることを物語っていました。

当時、政府は「ただちに影響はない」と繰り返し発信していました。危険を過小評価した結果、避難が遅れてしまった人も多く、無用な被ばくを引き起こしてしまったケースもあります。

事故から14年以上が経った今も、福島県では子どもや若者を中心に甲状腺がんが多発しています。

政府や国際機関は「事故の影響ではない」、「被ばく線量は少ない」、「スクリーニング検査による過剰診断」などと説明していますが、実際の検査では通常よりはるかに多くの甲状腺がんが見つかっています。

被ばくすると体はどうなるのか

放射線は、見えない、匂わない、感じない ― だからこそ恐ろしいのです。

放射性物質が体に入ると、放射性物質が発する放射線により細胞やDNAは傷つき、体の内側からじわじわと体が破壊されていきます。被ばくによる健康被害には以下があります。

  • がんの発症(甲状腺がん、白血病など)
  • 免疫力の低下で病気にかかりやすくなる
  • 臓器の障害(心臓、肝臓、生殖器などに影響)
  • 子どもや胎児への影響:成長の遅れ、先天的な障害、そして奇形が報告されています

特に胎児や子どもは放射線に敏感で、ほんの少しの被ばくでも取り返しのつかない影響を受けることがあります。

放射性物質はどうやって体に入るのか

原発事故で放出された放射性物質は、いくつもの経路を通って体に届きます。

  1. 空気から
    放射性物質を含んだ「放射能雲(プルーム)」を吸い込むと、肺に入り血液にのって全身をめぐります。
  2. 雨や土から
    放射性物質は雨や雪に混じって地面に落ち、土や草木にしみ込みます。その土で育った野菜や牧草を通じて人や家畜に取り込まれます。
  3. 水から
    川や湖に入り、水道や農業用水を汚染。飲料水や農産物を通じて体に入ります。
  4. 食べ物から
    牛乳、肉、魚、野菜など、食べ物に放射性物質が入り込みます。それを食べることで内部被ばくが起こります。
  5. 皮膚から
    服や髪、肌に付着した放射性物質が、毛穴や傷から体に入ることもあります。

このように、放射性物質はあらゆるルートを通じて、目に見えないうちに体に取り込まれてしまいます。だからこそ原発事故が起きたときには、体に取り込まないようにしなければなりません。

誰でもできる!被ばくを避ける方法

原発事故が起きたとき、簡単な行動で被ばくを防ぐことができます。特別な装備はいりません。

  • 屋内退避
    窓やドアを閉め、換気を止める。外気をなるべく入れない。
  • 外出後の洗浄
    帰宅したら服を脱ぎ、袋に入れる。シャワーで体や髪をしっかり洗い流す。
  • 食べ物や水に注意
    安全と確認された飲料水や食品を選ぶ。疑わしいものは口にしない。
  • 情報のチェック
    SNSの噂ではなく、自治体や公的機関の情報を信頼する。

安定ヨウ素剤の役割

事故の初期に特に危険なのが放射性ヨウ素です。甲状腺にたまりやすく、甲状腺がんの原因となります。

そこで役立つのが 安定ヨウ素剤です。あらかじめ体に安定したヨウ素を取り込んでおくことで、放射性ヨウ素が甲状腺に入り込むのを防げます。

放射性ヨウ素は半減期が短く、時間が経てば減衰して無くなっていくため、事故の初期段階で被ばくを防ぐことがとても大切です。「最初にきちんと防ぐ」だけで、大きな効果があるのです。

安定ヨウ素剤は、原発が立地している県や周辺の限られた地域の自治体でしか配布されていないかと思いますが、対策として知っていただければと思います。

まとめ ― 無用な被ばくをしないために

何度も言いますが、放射性物質や放射線は目に見えません。嫌な臭いがするわけでもありません。

だからこそ大げさに備えるくらいがちょうどいいと思います。

福島の事故が残した教訓は、「無用な被ばくは絶対に避ける」ということです。それは自分のためだけでなく、子どもや家族、友達、そして愛する人を守るための行動でもあります。

普段は放射線のことを考えない人も多いでしょう。でも、いざというときに備えておくことは、決して無駄にはなりません。

どうか「自分には関係ない」と思わずに、少しでも関心を持っていただけたら嬉しいです。