放射性物質の“湧き出し”って何?発見時の対応と安全対策

2025年9月18日

身元不明の放射性物質は「被ばく事故」を引き起こす

会社の倉庫、家の納屋、理科の教室などから、いつの時代のものか分からない身元不明の放射性物質や放射線源が見つかることがあります。私が分析機関に勤めていたときも、この手の問い合わせはよくありました。

Right Caption
ハナプク
身元不明の放射性物質ってなに?
Left Caption
マシマロ
廃棄や紛失、盗難といった理由で、法令に基づく管理がされなくなった放射性物質のことや。「湧き出し線源」っていう言い方をされるときもある。

このことから、管理されていない放射性物質や放射線源が見つかることを湧き出しと呼ぶこともあります。

また、原子力や地熱事業といった事業を展開している企業では、放射能を持つ鉱物(ラジウム鉱石やウラン鉱石など)を保管している例もあります。

これら鉱物を適切に防護することなく保管していると、思わぬ被ばく事故をひき起こすことがあり、注意が必要です。 

身元不明の放射性物質を見つけた場合にすべきこと

まずは原子力規制庁に連絡する必要があります。連絡先は下記をご参照ください。

連絡すると発見した場所や保管の状況など、いくつか聞かれると思います。よくある話なのですが、身元不明の放射線源の詳細について原子力規制庁から聞かれたときに、明確に回答できないケースが多いです。

というのも、このようなケースでは、管理している記録そのものがなかったり、容器のラベルが古くて見えなかったり、身元不明の放射線源に関する情報が見つからないことがほとんどです。

Right Caption
ぱおず
放射能なんてあまり詳しくないので聞かれても困ります。
Left Caption
マシマロ
まあ、そもそも身元不明やから情報がないのは、当然といえば当然なんやけどな…。 
Right Caption
ぱおず
じゃあ、どうしたらいいんですか?!
Left Caption
マシマロ
可能な範囲でええから、情報を集めるしかないな。最悪、写真ぐらいは撮れるやろ。放射性物質は簡単に捨てられへんし、何かしら情報がないと、最終的な受け入れ先も探されへんからな。

法規制の対象にならないケースもある

Left Caption
マシマロ
放射性物質は、基本的に法律に基づいて規制されてるんやけど、天然に存在するウランやトリウムの場合、法規制の対象にならへんケースがあるねん。以下、まず届出か許可の申請が必要になる条件を見ていくで。

「届出」が必要なケース

  • ウランまたはトリウムの放射能の濃度が74(Bq/g)(固体状の場合は370(Bq/g))を超える。
  • 「対象物質に含まれるウラン量の3倍」+「対象物質に含まれるトリウムの量」=900gを超える。

この両方を満たす場合、法規制の対象となり、使用の届出が必要になります。

「許可」が必要なケース

  • ウラン量が300gを超える。ここでいうウランは天然ウラン、劣化ウランである。
  • 濃縮ウランは、放射能濃度、数量にかかわらず全て法規制の対象となる。
  • トリウム量が900gを超える。

このいずれかに当てはまる場合、法規制の対象となり、使用の許可が必要になります。

マシマロ

逆に、放射能と数量が基準値以下やったら法規制の対象にならへん。そやから法律の観点からも、放射性物質を見つけてもうた場合は、数量重量放射能濃度といった情報が重要となるわけや。

原子力規制庁のホームページに「ウラン・トリウムガイドライン」があるので、詳しく知りたい方はそちらをご参照ください。

身元不明の放射性物質の放射能をどのように把握するか

身元不明の放射性物質の情報で最も重要なのは、放射能です。放射能が分からないと受け入れ先や処分方法を検討することもできませんし、何よりも被ばくを防ぐ上で押さえておきたい情報です。

放射能が分からない場合、分析機関に放射能分析を依頼する必要があります。

Left Caption
マシマロ
分析機関によっては、身元不明の放射性物質について全く情報がないってなったら、そもそも受け入れを断られるケースもあるから注意せなアカンで。
Right Caption
ハナプク
じゃあどうしたらいいの?
Left Caption
マシマロ
分析機関の人に現地まで来てもらって、分析用のサンプルを一部取ってもらうとか、せなアカンやろな。あと、何でもかんでも分析できるわけちゃうから、そこは理解しとかなアカンで。
Right Caption
ハナプク
放射能なら何でも分析できるんじゃないの?
Left Caption
マシマロ
液体とか鉱物みたいなサンプルやったら分析できるけど、例えば、機械の中に入ってるとか、厳重に密封されてるとかやったら、分析機関のほうで壊すわけにもいかへんからな。こういう場合は厳しいな。
筆者

分析機関には、写真だけじゃなくて、試料の性状や形状(粒状・粉状・塊等)、保管状態など、可能な限りたくさん情報を伝えていただいたほうが確実です。 

可能ならサーベイメータで線量を測定しておくのがベスト

もう一つ最後に、可能であれば、サーベイメータを用いて放射性物質の線量を測定していただくのがベストです。

サーベイメータについてご存じない方は、下記をご参照ください。

偶然発見された放射性物質は、放射線源として認識されていないため、放射線に対する防護が行われずに放置されていたり、無造作に保管されているケースが多いです。

サーベイメータで線量を知ることができれば、おおよその被ばく線量を見積ることができます。無視できるレベルなのか、防護や遮へいが必要なのかといった判断もできるかと思います。

Right Caption
ハナプク
サーベイメータってどこで手に入るの?
Left Caption
マシマロ
まずは住んでいる自治体に問い合わせしてもらうのがええかな。放射線とかは、環境とか保健を管轄している部署が窓口になると思うわ。あと、民間会社でもレンタルしてるところはあるわ。